Last Updated on 2025年1月12日 by 渋田貴正

近年、定期建物賃貸借契約(以下、定期借家契約)を締結している不動産の相続に関する相談が増えています。この契約形態は、通常の賃貸借契約とは異なり、契約期間が明確に定められ、期間満了時には借主が退去することが原則です。そのため、相続後の対応も特殊なケースが多く、注意が必要です。以下では、相続人がどのように対処すべきかを詳しく解説します。

定期借家契約とは?

まず、相続した建物が定期借家契約の対象である場合、その契約内容を十分に理解することが重要です。以下のポイントを確認しましょう。

  • 契約期間の確認: 定期借家契約では、契約期間が満了すると自動的に契約が終了します。契約期間がどの程度残っているのか確認してください。
  • 契約書の精査: 契約書には、契約期間、賃料、更新不可条項、特約事項など、相続後の対応に必要な情報が記載されています。契約書を精査し、内容を把握しましょう。
  • 借主の権利: 定期借家契約においても、借主には一定の保護が与えられています。例えば、契約期間中に借主が適法に使用している場合、相続人が勝手に契約を解除することはできません。

定期借家契約についてのもう少し細かい内容については、「定期借家契約とは」のページもご覧ください。

相続登記の手続き

建物を相続した場合、まずは相続登記を行い、建物の所有者を相続人として登記する必要があります。これにより、相続人が正式な所有者として建物を借りている者(借家人)に対して、その権利を主張できます。

定期借家契約がついた建物だからといって、

相続登記が完了しない間は、借家人としては誰が貸主なのか明確にならず、その間は相続人の共有という扱いになりますので、早めに遺産分割協議を済ませて相続登記を完了させることが重要です。

借主とのコミュニケーション

相続登記が完了したのち、借主としっかりとコミュニケーションを取ることが重要です。

  • 通知書の送付 建物の所有者が変更された旨を借主に通知します。通知書には、所有者の氏名、連絡先、相続登記が完了したことを記載します。間に不動産の管理を委託している会社が入っている場合は、その会社から送付してくれることもあります。
  • 現状確認の実施 借主に連絡を取り、建物の利用状況や賃料の支払い状況を確認します。
  • 必要に応じた契約見直し 特約事項や賃料に問題がある場合、借主と協議の上、契約内容の見直しを行うことも可能です。ただし、法律上の制約があるため、専門家に相談することをお勧めします。

定期借家契約は通常の賃貸契約とは異なるため、法律や税務の知識が求められる場面も多いです。司法書士などの専門家に相談することで、スムーズな対応が可能になります。

 重要なポイントとしては以下のような点があります。

  • 契約期間満了のスケジュール管理 定期借家契約では、期間満了時に借主が退去するため、次の賃貸計画を早めに立てることが重要です。
  • 建物の維持管理 定期借家契約中であっても、建物の所有者には維持管理の責任があります。定期的な点検や修繕を怠らないようにしましょう。
  • 税務申告の適正化 賃料収入がある場合、適切に税務申告を行う必要があります。また、定期借家契約をしている建物については相続税の計算上、通常とは異なる方法で評価することができます。

定期借家契約された建物を相続した場合、契約内容の確認、相続登記の手続き、借主との連絡、専門家への相談が不可欠です。これらを適切に行うことで、建物の管理や運用を円滑に進めることができます。複雑な問題に直面した場合は、早めに専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

当事務所では、定期借家契約の付いた建物を相続した場合の登記手続きや税務手続きについてもサポートしています。お気軽にご相談ください。