Last Updated on 2025年1月14日 by 渋田貴正

海外在住の個人が日本で不動産収入があるときの申告すべき国

海外在住の人が日本で不動産を所有して、賃料収入を得ている場合、その所得は不動産所得となります。しかし、所有者本人は海外に居住していているため、どの国で所得税が課税されるのかということを理解しておく必要があります。

以下では租税条約締結国を前提に話を進めます。不動産については非常に答えが明確で、一般的な租税条約では、「不動産が所在する国」に課税権を与えるルールとなっています。このルールは、物理的に移動が不可能な不動産と、その不動産の所在国との間に密接な経済的関係があり、所有者本人の住所よりも不動産の所在地で課税することが適切であるという考えに基づいています。

具体的には、租税条約第6条に基づき、不動産所得はその不動産が所在する国で課税されます。このルールは、不動産の使用形態や収入の種類に関係なく適用されます。具体的には、以下のような場合が対象となります。

  • 不動産を直接利用して得られる収益(例:農業や林業の収益)
  • 賃貸による収入
  • 短期貸出やシェアリングサービスによる収益
租税条約上の不動産の定義と対象範囲

租税条約における”不動産”の定義は、不動産が所在する国の法律に基づきます。ただし、条約では以下のような資産や権利が不動産に含まれることが明記されています。

  • 建物や構造物などの附属財産
  • 農業や林業に使用される機器や設備
  • 不動産に関する一般法の規定が適用される権利
  • 天然資源の採取権やその対価としての料金

一方で、日本の所得税では不動産所得として扱われている船舶や航空機の貸付の対価は、租税条約上は不動産には含まれません。(多くの人にとっては全く影響ないと思いますが。)

結局は、日本で所有している不動産収入については、所有者がどの国に住んでいても、どの国籍であったとしても日本で確定申告するということになります。ただし、非居住者としての確定申告になる場合は、所得控除について雑損控除、寄付金控除、基礎控除しか使えないなど居住者との違いがありますので注意しておきましょう。(減価償却や各種必要経費については居住者の確定申告と変わりありません。)

外国の法人名義で不動産を日本国内に所有している場合の法人税の課税

企業が所有する不動産から生じる所得も、不動産が所在する国で課税されます。これは、企業が直接利用する場合だけでなく、賃貸や間接的な収益を得る場合にも適用されます。

具体例として、海外の企業が日本に所有するオフィスビルを賃貸している場合、その賃貸収入は不動産が所在する国で課税対象となる可能性があります。また、企業が不動産所在地国に恒久的施設を有しない場合でも、不動産所得はその所在国で課税されることが租税条約上で明記されています。

(参考)

租税条約(OECDモデル)

第6条 不動産所得
1.一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。(77年改正)
2. 「不動産」とは、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。不動産には、いかなる場合にも、これに附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価としての料金(変動制であるか固定制であるかを問わない。)を受領する権利を含む。船舶及び航空機は不動産とはみなさない。(77年改正)
3. 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他の全ての形式による使用から生ずる所得について適用する。
4. 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得についても、適用する。(77、2000年改正)

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