Last Updated on 2025年2月11日 by 渋田貴正
日本において、戸籍は個人の身分関係を公的に証明する重要な書類です。結婚や出生、死亡、相続手続きなど、さまざまな場面で必要になります。しかし、戸籍は原則として本籍地の市区町村役場で管理されているため、本籍地が遠方にある場合は手続きが煩雑になりがちです。
そこで利用できるのが「戸籍の広域請求」です。広域請求を利用すれば、本籍地とは異なる自治体の窓口で戸籍を取得することが可能となり、遠方まで戸籍を請求する必要がなくなります。
戸籍の広域請求とは
戸籍の広域請求とは、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本(全部事項証明書)や戸籍抄本(個人事項証明書)を取得できる制度です。これは、2024年の戸籍法改正により、全国の市区町村役場での取得が可能になりました。
通常、戸籍は本籍地の役所で管理されていますが、広域請求を利用すると、たとえば東京都に住んでいる人が、北海道や沖縄など遠方にある本籍地の戸籍を取得することができます。
この制度の導入により、転居や結婚などで本籍地と居住地が異なる人でも、遠方まで出向くことなく戸籍を取得できるようになり、利便性が向上しました。
戸籍の広域請求の対象となる戸籍
広域請求で取得できる戸籍には、以下の種類があります。
- 戸籍謄本(全部事項証明書)
- 戸籍に記載されているすべての人の情報を含む。
- 家族全員の情報を確認したい場合に必要。
- 戸籍抄本(個人事項証明書)
- 戸籍の中から特定の個人のみの情報を記載。
- 自分自身や特定の家族の戸籍情報が必要な場合に利用。
- 除籍謄本・除籍抄本
- 戸籍のすべての人が除籍された(死亡や転籍などで誰も戸籍に属していない)場合の記録。
- 相続手続きなどで必要になることが多い。
- 改製原戸籍
- 戸籍が法改正などで新しく作り直された際の、過去の戸籍情報。
- 遺産相続や家系図作成の際に使用されることがある。
戸籍の広域請求の方法
広域請求を行う際には、以下の手順を踏む必要があります。
請求できる人
広域請求ができるのは、原則として戸籍に記載されている本人およびその直系親族(父母・祖父母・子・孫など)です。兄弟姉妹や配偶者は直系ではないため、原則として請求できません。
必要書類
広域請求を行う際には、以下の書類が必要です。
- 請求書(各自治体の役所で用意されている)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 請求者が直系親族であることを証明する書類(必要な場合)
- 例えば、孫が祖父母の戸籍を請求する場合、親子関係を示す戸籍のコピーが必要になることがある。
請求方法
広域請求は、窓口請求または郵送請求のいずれかで行えます。
- 窓口請求
市区町村役場の窓口に直接出向き、必要書類を提出して申請します。その場で本人確認が行われ、問題がなければ戸籍が交付されます。 - 郵送請求
窓口に行けない場合、郵送での請求も可能です。必要書類と返信用封筒、手数料(定額小為替など)を同封し、本籍地の役所に送付します。
戸籍の広域請求の手数料や留意点
戸籍の交付には手数料がかかります。手数料は自治体ごとに若干異なりますが、一般的には以下の通りです。
- 戸籍謄本・抄本:1通あたり450円
- 除籍謄本・抄本、改製原戸籍:1通あたり750円
支払い方法は、窓口では現金、郵送請求では**定額小為替(ゆうちょ銀行で購入可能)**を利用することが一般的です。
広域請求には、いくつかの注意点があります。
- コンピュータ化されていない戸籍は取得できない場合がある
- 2000年(平成12年)以降、戸籍の電子化が進められましたが、古い戸籍はデジタル化されていない場合があります。その場合、本籍地の役所に直接問い合わせる必要があります。
- 申請内容が不明確な場合、交付されないことがある
- 申請書には、本籍地の情報(都道府県・市区町村・番地)を正確に記入する必要があります。不明な場合は、事前に調べておきましょう。
- 親族であっても請求できない場合がある
- 直系でない親族(兄弟姉妹や叔父叔母)は広域請求の対象外です。相続手続きなどで必要な場合は、代理人を通じて請求するか、遺産分割協議の資料として個別に対応が求められることがあります。
- 役所の開庁時間に注意
- 窓口請求は、役所の開庁時間(平日8:30~17:00)が基本です。土日祝日は対応していないため、スケジュールを調整する必要があります。
戸籍の広域請求は、遠方に本籍地がある人にとって非常に便利な制度です。手続きは比較的シンプルですが、請求できる対象者や必要書類をしっかり確認しておくことが重要です。
とはいえ、戸籍の広域請求をするにしても、どの自治体に請求すべきかなどは請求する人が調査する必要があります。当事務所では、相続時の戸籍請求を行っています。お気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。