Last Updated on 2025年2月20日 by 渋田貴正

日本で設立した会社(資産管理会社など)が海外の不動産を所有するケースが増えています。海外の不動産投資は、資産を分散し、高いリターンを狙う手段として注目されています。しかし、日本で資産管理会社を設立して海外不動産を運用する場合、法人税の取り扱いには十分な注意が必要です。

日本の法人税における内国法人と外国法人

日本の法人税法では、法人は「内国法人」と「外国法人」に区分され、それぞれ異なる納税義務を負います。

法人の種類 定義 納税義務
内国法人 日本国内に本店または主たる事務所を有する法人 世界の所得全体に対して法人税を申告・納付する義務(無制限納税義務者)
外国法人 内国法人以外の法人 国内源泉所得のみに対して法人税を申告・納付する義務(制限納税義務者)

日本国内に本店を置く資産管理会社は、海外で得た不動産収益を含め、全世界の所得について日本の法人税を支払う必要があります。これは日本が採用している「本店所在地基準」に基づいています。(一部の国は「管理支配地基準」を採用しています。)

基準 説明 採用国
本店所在地基準 法人の本店や主たる事務所がある国を基準に、その国の法人とみなされる。 日本など
管理支配地基準 法人の経営・管理が実際に行われている場所を基準に、その国の法人とみなされる。 イギリスなど
海外不動産投資における日本での法人税の計算

一般的に、法人税の課税対象となる所得は、各事業年度の利益(益金)から損失や費用(損金)を差し引いたものです。

  1. 益金の計算

益金とは、法人が収益として認識する金額を指します。例えば、海外不動産に関していうと、資産管理会社が保有する海外不動産の賃貸収入や売却益などが該当します。原則として、収益の発生時点(不動産の引渡しや役務提供時)で益金に計上します。

  1. 損金の計算

損金は、以下のような法人の支出が該当します。

  • 売上原価(不動産取得費など)
  • 販売費・一般管理費(減価償却費、管理費など)
  • 損失(不動産評価損など)

減価償却の適用
日本で設立した会社が所有する海外不動産の減価償却を行う際には、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づき耐用年数が決められます。中古不動産を取得した場合、法定耐用年数の簡便法を利用できます。個人については、減価償却に一定の制限が設けられていますが、法人所有の場合、今のところ制限は設けられていません。

【法人税額の計算】

法人税の計算は、以下のように行われます。

税率の適用区分 税率
一般法人(所得800万円以下) 19%(一定の場合には15%)
一般法人(所得800万円超) 23.2%

また、法人税の税額控除には、源泉徴収税額控除や外国税額控除などが含まれます。日本で設立した資産管理会社が海外で納税した税額は、外国税額控除を適用し、日本の法人税から控除できる仕組みになっています。

【外貨建取引の円換算】

日本で設立した会社が海外不動産投資を行う場合、外貨建て取引の日本円換算が必要です。法人税法では、以下の方法が認められています。

資産・負債の種類 換算方法
外貨建債権・負債 発生時換算法 or 期末時換算法
売買目的有価証券 期末時換算法
償還期限のある有価証券 発生時換算法 or 期末時換算法
外貨預金 発生時換算法 or 期末時換算法
外国通貨 期末時換算法

為替換算の差額は、益金または損金として計上されるため、円高・円安による影響を考慮する必要があります。