Last Updated on 2025年3月2日 by 渋田貴正

特定創業支援等事業とは?

特定創業支援等事業とは、地方自治体が創業希望者や創業間もない事業者に対し、経営・財務・人材育成・販路開拓の4つの分野にわたる支援を行う制度です。この支援を受け、自治体が発行する「支援を受けた証明書」を取得すると、登録免許税の軽減や創業関連保証の特例、日本政策金融公庫の新規開業支援資金の金利引き下げなど、さまざまな優遇措置を受けることができます。

ただし、この証明書を活用する際にはいくつかの注意点があります。特に、証明の適用範囲や手続き上の要件をしっかりと理解しておかないと、支援を受けられなくなる可能性があります。ここでは、特定創業支援等事業の証明を利用する際の注意点を詳しく解説します。

会社設立時の登録免許税の軽減措置

(1) 登録免許税の軽減とは?

特定創業支援等事業による支援を受けた創業者は、会社設立時に登録免許税の軽減措置を受けることができます。この時の対象となるのは、株式会社と合同会社のみです。一般社団法人や合名会社、合資会社は対象外となっています。

(認定事業再編計画等に基づき行う登記の税率の軽減)
租税特別措置法 第80条(中略)
3 個人が、産業競争力強化法第128条第2項に規定する認定創業支援等事業計画に係る同法第127条第1項又は第128条第1項の認定を受けた市町村(特別区を含む。)の区域内において、当該認定創業支援等事業計画に記載された同法第2条第33項に規定する特定創業支援等事業による支援を受けて株式会社又は合同会社の設立をした場合には、当該株式会社又は合同会社の設立の登記に係る登録免許税の額は、財務省令で定めるところにより同法の施行の日から令和9年3月31日までの間に登記を受けるものに限り、登録免許税法第9条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる会社の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
1 株式会社 当該株式会社の資本金の額に1,000分の3.5を乗じて計算した金額(当該金額が75,000円に満たない場合には、申請件数1件につき75,000円)
2 合同会社 当該合同会社の資本金の額に1,000分の3.5を乗じて計算した金額(当該金額が30,000円に満たない場合には、申請件数1件につき30,000円)
会社の種類 通常の登録免許税 軽減後の登録免許税
株式会社 資本金の0.7%(最低15万円) 資本金の0.35%(最低7.5万円)
合同会社 資本金の0.7%(最低6万円) 資本金の0.35%(最低3万円)

登録免許税を軽減するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 会社法上の「発起人」であり、かつ「代表者」として会社を設立すること。
  • 証明書の原本を法務局に提出すること。

(2) 組織変更時の適用外

特定創業支援等事業による証明書を取得していても、すでに会社を設立した後に組織変更(例:合同会社から株式会社への変更)を行う場合、登録免許税の軽減は適用されません。

(3) 証明書の自治体の適用範囲

証明書を発行した自治体とは異なる市区町村で会社を設立する場合、登録免許税の軽減措置を受けることができません。証明書の適用範囲について、事前に自治体に確認しておきましょう。

創業関連保証の特例

(1) 保証制度の概要

特定創業支援等事業の支援を受けた創業者は、無担保・第三者保証人なしで創業関連保証を利用できます。この保証制度は、事業開始の6か月前から適用可能であり、創業時の資金調達をスムーズに進めるための大きなメリットとなります。

保証を受けるためには、以下の手続きが必要です。

  • 信用保証協会または金融機関に「支援を受けた証明書(写し可)」を提出する。
  • 別途、信用保証協会の審査を受ける。

(2) 他の市区町村での適用可否

登録免許税の軽減措置とは異なり、創業関連保証の特例については、証明書を発行した自治体とは異なる市区町村で創業する場合でも適用を受けることが可能です。

日本政策金融公庫の新規開業支援資金

(1) 貸付利率の引き下げ措置

特定創業支援等事業の支援を受けた創業者は、日本政策金融公庫が提供する「新規開業支援資金」の貸付利率の引き下げ対象となります。ただし、この制度を利用するには、公庫の審査を通過する必要があります。

(2) 証明書の適用範囲

日本政策金融公庫の新規開業支援資金の利率引き下げは、会社設立の登録免許税ケイン減と同じく証明書を発行した自治体と異なる市区町村で創業する場合、適用されません。この点は創業関連保証の特例と異なります。創業を予定している地域と証明書の発行自治体が異なる場合は、注意が必要です。

特定創業支援等事業の証明を活用することで、会社設立時のコスト削減や資金調達の負担軽減といった多くのメリットを受けることができます。しかし、証明書の適用範囲や制度ごとの条件を理解しないと、期待していた支援を受けられないこともあります。特に、登録免許税の軽減は発行自治体内でのみ適用されるため、事前に自治体や専門家に相談することが大切です。

当事務所では、創業支援に関する各種手続きのサポートを行っております。「自分がこの支援を受けられるのか?」といったご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください!