Last Updated on 2025年3月6日 by 渋田貴正
国ごとに異なる相続税の仕組み
相続税や贈与税の制度は国によって大きく異なります。大きく分けると、
- 相続税・贈与税がある国
- 遺産に対して課税する「遺産課税方式」
- 相続人が取得した財産に課税する「遺産取得課税方式」
- 相続税・贈与税がない国
- 例えば香港やシンガポールなど、タックスヘイブン的な地域
- フランスやカナダのように他の税制で補完する国
日本では、遺産取得課税方式を採用しており、相続人が受け取る財産の額に応じて税額が決まります。一方、アメリカやイギリスでは、相続財産全体に課税される遺産課税方式が採用されています。
相続税の遺産課税方式と遺産取得課税方式
相続税がある国では、次の2つの方式のいずれかが採用されています。
方式 | 特徴 | 採用国 |
遺産課税方式 | 遺産全体に課税し、税金は被相続人の遺産から支払われる | アメリカ、イギリス、韓国、ベルギー |
遺産取得課税方式 | 相続人が受け取った財産に対して課税 | 日本、ドイツ、イタリア |
2つの方式の違いを簡単にまとめると以下の通りです。
方式 | メリット | デメリット |
遺産課税方式 | – 相続人の取得額に関係なく一定の税制 | – 遺産額が大きいと税負担が大きくなる |
– 相続手続きがシンプルになりやすい | – 遺産分割の柔軟性が制限される場合がある | |
遺産取得課税方式 | – 相続人の負担能力に応じた税額設定が可能 | – 相続人ごとに税負担が異なるため、不公平感が生じる可能性 |
– 遺産の分割が自由にできる | – 手続きが複雑になりやすい |
日本の相続税は、さらに「法定相続分遺産取得課税方式」を採用しており、法定相続分に基づいて計算した税額を、実際の相続分に応じて按分する仕組みになっています。
国際相続と二重課税問題
国をまたぐ相続では、二重課税の問題が発生することがあります。
例えば、
- 被相続人がアメリカ在住、相続人が日本在住の場合
- アメリカでは「遺産課税方式」により遺産全体に課税
- 日本では「遺産取得課税方式」により、相続人の受け取る財産に課税
- その結果、同じ遺産に対してアメリカと日本で税金が発生
このような二重課税を防ぐために、日本では「外国税額控除」の制度が用意されています。しかし、カナダのようにキャピタルゲイン課税が適用される場合は、日本の相続税の「外国税額控除」の対象とならないため、注意が必要です。
相続税が存在しない国
世界には相続税が存在しない国も多数あります。その理由は、文化や歴史、税制全体のバランスなどが影響しているためです。
相続税がない国・地域 | 特徴 |
香港・シンガポール | タックスヘイブンであり、投資を促進するために相続税を撤廃 |
オーストラリア・ニュージーランド | かつて存在した相続税を廃止し、他の税制でカバー |
フランス | 相続税は存在するが、特定のケースでは免除される制度あり |
カナダ | 相続税はないが、キャピタルゲイン税として資産譲渡時に課税 |
カナダのように、相続税が廃止された後にキャピタルゲイン課税が導入された国もあります。これは、被相続人が生前に取得した資産の価値上昇分に対して課税する仕組みです。
国際相続は、国ごとの法制度や税制の違いが大きく、適切な対策が必要です。当事務所では、国際相続に精通した専門家が、お客様の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。相続に関する不安や疑問がある方は、ぜひ一度ご相談ください!

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。