Last Updated on 2025年3月18日 by 渋田貴正
株式投資をしている方の中には、「一般口座と特定口座の両方を持っているけれど、確定申告は一般口座だけで済ませられるの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。確定申告における一般口座と特定口座の違い、そして一般口座だけを申告することが可能なのかについて解説します。
「一般口座」と「特定口座」とは?
まず、そもそも一般口座と特定口座の基本的な違いを押さえておきましょう。
一般口座
一般口座とは、証券会社が年間の取引記録をまとめてくれない口座です。そのため、売却した株の取得価格(買ったときの値段)や売却価格、売却損益などを自分で計算する必要があります。確定申告をする場合は、自分で計算した結果を申告書に記載し、税務署に提出することになります。
特定口座
特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。
- 源泉徴収ありの特定口座では、証券会社が売却時に自動で税金(所得税や住民税)を計算し、納税まで行ってくれます。そのため、基本的に確定申告をする必要はありません。
- 源泉徴収なしの特定口座では、証券会社が取引の記録をまとめた「年間取引報告書」を作成してくれますが、税金の計算や納税は自分で行う必要があります。そのため、確定申告が必要になる場合があります。
項目 一般口座 特定口座(源泉徴収あり) 特定口座(源泉徴収なし) 取引記録の作成 自分で記録・計算が必要 証券会社が記録・計算 証券会社が記録・計算 確定申告の必要性 必要(利益が出た場合) 不要 必要(利益が出た場合) 納税方法 自分で計算し納付 証券会社が源泉徴収 自分で計算し納付 損益通算 可能 確定申告すれば可能 可能 手間 多い(計算が必要) 少ない(自動で納税) 中程度(申告が必要)
このように、一般口座と特定口座では手間や税金の処理方法が異なります。
一般口座だけを確定申告することは可能?
結論から言うと、特定口座は申告せずに一般口座だけを確定申告することは可能です。 ただし、注意すべき点があります。
一般口座のみ申告できるケース
一般口座の取引のみを確定申告し、特定口座(源泉徴収なし)の取引を申告しないことは、制度上可能です。
たとえば、
- 一般口座で50万円の利益が出た
- 特定口座で30万円の損失が出た
この場合、一般口座の50万円の利益だけを申告し、特定口座の30万円の損失を申告しないことも可能です。しかし、特定口座の損失を考慮せずに申告すると、結果的に納める税額が増えてしまうため、慎重に判断する必要があります。
損益通算を考慮すべきケース
確定申告では、一般口座と特定口座の売却損益を合算することが可能です。そのため、
- 一般口座で利益が出ているが、特定口座で損失がある場合 → 特定口座も含めて申告したほうが納税額を抑えられる可能性がある。
また、確定申告をすることで、損失を3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺することもできます。この点も考慮して申告するかどうかを決めるとよいでしょう。
確定申告が不要なケース
「特定口座(源泉徴収あり)」のみで株式取引を行っている場合は、基本的に確定申告は不要です。証券会社が自動的に税金を引いて納税してくれるため、自分で申告する必要はありません。
また、一般口座のみの場合でも、株式の売却損が出た場合で他に所得がなければ確定申告は不要となります。(実際には他の所得があるケースも多いと思いますが。)この場合、確定申告をすることで3年間損失を繰り越して、翌年以降の利益と相殺することが可能です。この点も考慮して、申告するかどうかを判断するとよいでしょう。
株式の確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、基本を押さえればスムーズに進めることができます。不明点があれば税理士や証券会社に相談するのも一つの手です。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。