Last Updated on 2025年3月20日 by 渋田貴正
近年、海外在住の方が日本でビジネスを展開しようとするケースが増えており、当事務所でも数多くの海外在住の方の会社設立やその後の税務顧問のサポートをしてきています。
日本でビジネスを行うには日本で会社設立をするほかに海外で設立した会社を利用したり、海外で個人事業主登録したりといった方法が考えられます。そんな中で、日本でのビジネス活動をスムーズに進めるために、日本国内で法人を設立することが有利な場合があります。海外法人を設立する場合や個人事業主として活動する場合と比較しながら、日本で会社を設立したほうがよいケースについて解説します。
日本で会社を設立する理由 その1 信頼性を高めたい場合
日本国内で法人を設立すると、日本の取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。特に以下の点で信頼性が向上します。
- 法人名義の銀行口座を開設できるため、取引の透明性が向上する。
- 取引先が法人と契約することを好むため、ビジネスチャンスが広がる。
- 会社登記があることで、日本国内の企業からの信用が向上する。
一方、海外法人の場合、日本の取引先が支払いをためらうことがあり、取引が成立しにくい場合があります。
日本で会社を設立する理由 その2 日本国内での銀行口座が必要な場合
日本で法人を設立すると、法人名義の銀行口座を開設することができるため、
- 日本円での決済がスムーズに行える。
- 海外送金の手数料や為替リスクを回避できる。
- クレジットカード決済や国内送金を円滑に行える。
個人事業主として海外在住のまま日本の銀行口座を開設することは非常に困難です。また、海外法人での銀行口座開設も制約が多く、国内取引の際に不便を感じることが多くなります。
日本で会社を設立する理由 その3 日本の税制を適用させたい場合
日本国内で法人を設立することで、日本の税制に則った経営ができるため、以下のような利点があります。
- 消費税還付が受けられる可能性がある。
- 日本国内での法人税の適用を受けることで、適切な税務処理が可能になる。
- 一定の税務優遇措置を利用できる場合がある。
海外法人や海外個人事業主として日本で活動する場合、日本での課税関係が複雑になり、税務リスクが増す可能性があります。
日本で会社を設立する理由 その4 日本国内での法的手続きを簡略化したい場合
日本で法人を設立すると、以下のような法的手続きがスムーズに進められます。
- 契約の締結が容易になる(日本国内企業は法人との取引を好む)。
- 日本の法律に基づいた労働契約の締結が可能。
- 商標登録や知的財産権の保護を受けやすくなる。
海外法人の場合、契約や法的手続きにおいて、日本の法律に適合しない場合があり、手続きが煩雑になることがあります。
日本で会社を設立する理由 その5 日本国内でのビジネス拡大を目指す場合
日本で法人を設立すると、以下のような成長の機会を得やすくなります。
- 日本国内のビジネスネットワークに参加しやすくなる。
- 日本国内での補助金や助成金を活用できる場合がある。
- 将来的に法人を売却することも可能。
一方、海外法人の場合、日本国内でのビジネスネットワークを構築するのが難しく、資金調達やビジネスの拡大に制約が生じることがあります。
日本で会社を設立する理由 その6 日本国内での事業運営を円滑にしたい場合
日本法人を設立することで、現地の法規制に準拠した形で事業運営が可能になります。
- オフィスの賃貸契約がスムーズにできる。
- 従業員の雇用が日本の労働法に基づいて可能。
- 日本国内のビジネスパートナーとの関係を円滑に構築できる。
海外法人や個人事業主として日本で事業を展開しようとすると、オフィスの契約や雇用の手続きが複雑になりがちです。
それぞれのビジネス形態の違いを簡単にまとめると以下のようになります。
項目 | 日本で会社設立 | 海外の会社を利用 | 海外で個人事業主 |
---|---|---|---|
信頼性 | 高い(法人としての信用を得やすい) | やや低い(日本の取引先との信用構築が課題) | 低い(法人より信用を得にくい) |
銀行口座の開設 | 容易(法人名義の口座開設可能) | 困難(日本の銀行口座開設が難しい) | 非常に困難(日本の銀行口座開設がほぼ不可能) |
税制面のメリット | 法人税適用、消費税還付可能 | 海外の税制に依存(日本の消費税還付は受けにくい) | 個人所得税適用、日本の税制との調整が必要 |
法的手続き | 契約や労働法に準拠した運営が可能 | 契約や法的手続きが煩雑になる可能性あり | 契約締結が難しく、法的保護が弱い |
ビジネスの拡大 | 国内ネットワークを活用しやすい | 海外市場の拡大には有利 | 規模の拡大には制限がある |
事業運営のしやすさ | オフィス契約や従業員雇用が容易 | 日本国内でのオフィス契約や従業員雇用が難しい | 日本国内での事業運営は複雑 |
補助金・助成金 | 補助金や助成金を活用できる可能性あり | 基本的に日本の補助金や助成金は適用外 | 補助金・助成金は基本的に適用外 |
海外在住の方が日本でビジネスを展開する場合、日本国内で法人を設立することには多くのメリットがあります。
- 日本国内での信頼性が向上し、取引先を増やしやすい。
- 日本の銀行口座を開設しやすく、決済がスムーズになる。
- 税制面での利点を享受できる。
- 法的手続きが簡単になり、契約や知的財産の保護が容易になる。
- ビジネスの成長機会が広がる。
- 事業運営がしやすくなり、オフィスの賃貸や雇用がスムーズに行える。
ただし、日本で法人を設立することが必ずしも最適とは限りません。ビジネスの規模や運営方針、取引先との関係などを考慮し、どの形態が最も適しているのかを慎重に検討することが重要です。
当事務所では、日本での法人設立や税務手続きを専門にサポートしており、お客様のビジネスモデルに最適な方法をご提案いたします。海外在住の方の日本での会社設立に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください!

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。