Last Updated on 2025年4月6日 by 渋田貴正

ドイツ国籍の被相続人の相続放棄の可能性

日本在住のドイツ国籍の方が亡くなったとき、相続人としては「相続放棄」ができるのかどうか、不安に思われることもあるかと思います。

今回は、相続放棄の可能性について、日本の法律上の管轄権の有無とドイツ法上の相続放棄制度の有無の2つの観点からわかりやすく解説していきます。

日本の家庭裁判所に管轄権があるか?

まず重要なのは、「そもそも相続放棄をどこで申し立てればいいのか?」という点です。つまり、日本の家庭裁判所がその相続放棄について判断できるかどうか、という問題です。

これについては、家事事件手続法第3条の11に定めがあります。

家事事件手続法

第3条の11 裁判所は、相続に関する審判事件(中略)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

少し条文が長いですが、要点を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 相続開始時に被相続人の住所が日本国内にあれば、家庭裁判所はその事件について管轄権を持つ。
  • 住所がない場合には、居所(生活の実態があった場所)が日本国内にあればよい。
  • それらがない場合でも、日本国内に最後の住所があったときは、やはり日本の家庭裁判所が管轄する。
     ※ただし「その後に外国に住所を移した場合」は除かれます。

上記の通り、日本に最後の住所があった場合には、ドイツ国籍の被相続人であっても日本の家庭裁判所が管轄権を有します。

ドイツ法上も相続放棄制度があるか?

しかし、もう一点そもそもドイツの法律で相続放棄という制度があるかどうかという問題があります。いくら日本の家庭裁判所が管轄権を有していても、そもそも本国の法律で相続放棄が定められていなければ相続放棄をすることはできません。

したがって、ドイツ国籍の方が亡くなった場合、たとえ日本に住んでいたとしても、相続に関しては基本的にはドイツの民法(BGB)が適用されることになります。

ではドイツに「相続放棄制度」があるのかというと、答えは「YES」です。

ドイツ民法(BGB)に、相続放棄(Ausschlagung)の制度が明確に定められています。日本と同様、相続人は一定期間内に放棄の意思を示すことで、相続を拒否することが可能です。

日本で亡くなったドイツ国籍の被相続人については日本の家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることが法律上可能です。

ドイツ法の相続放棄の存在証明が必要

ただし、ドイツで相続放棄が認められているということを証明するためにドイツの法律を調査して、該当する条文を提出するなど、日本国籍の被相続人の相続放棄よりも必要書類が多くなります。

ドイツ国籍の被相続人に関する相続放棄は、日本法とドイツ法の両方を見据えて対応する必要があるため、判断に迷うことも多いかと思います。

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