Last Updated on 2025年4月8日 by 渋田貴正

不動産の名義は、所有者の権利を証明する非常に重要な情報です。しかし、登記手続の際に誤って「単独名義」や「共有名義」で登記されてしまうというミスが発生することがあります。たとえば、本来はAさんとBさんの共有で取得した不動産が、誤ってAさん単独の名義で登記されていた場合や、その逆に、本来はAさんが単独で取得したのにAさんとBさんの共有名義で登記されてしまっていた、というケースです。

このような場合、「更正登記」という手続きによって、正しい内容に修正することができる場合があります。ただし、すべてのケースで更正登記が認められるわけではありません。登記に誤りがある場合、それが「錯誤」または「遺漏(=記載漏れ)」によるものであれば、更正登記によって修正することができます。

登記ミスのよくある原因

登記のミスは単なる「うっかり入力ミス」だけではありません。実際には以下のような事情によっても誤った登記が行われることがあります。

  • 話し合いの認識違い
    たとえば、AさんとBさんが共同で不動産を購入したつもりでも、登記申請時に「Aさん単独の名義で」と誤って伝えてしまい、そのまま登記されてしまうケース。
  • 名義借り
    実際に資金を出したのはCさんなのに、住宅ローンの都合などで、配偶者であるDさんの名義で登記した場合。後になってCさんが「自分の持分が反映されていない」と気づくこともあります。
  • 書類作成ミス
    売買契約書や登記原因証明情報の記載ミス、印紙の貼り間違いなどにより、実態と異なる登記内容となることがあります。

このような登記ミスは、放置すると後々の相続や売却に大きな支障をきたす恐れがあるため、早めの対応が重要です。

更正登記の申請方法とは?

更正登記を行うには、原則として「登記権利者」と「登記義務者」による共同申請が必要です。具体的な当事者関係は、誤りの内容によって異なります。

登記の誤り内容 登記権利者 登記義務者 備考
本来は「乙・丙の共有」だが「乙の単独名義」で登記 丙(登記に漏れた人物) 乙(現登記名義人)、甲(前所有者) 更正により共有登記へ
本来は「乙の単独所有」だが「乙・丙の共有名義」で登記 乙(本来の単独所有者) 丙(誤って登記された者)、甲(前所有者) 更正により単独名義へ

※登記原因が民事執行法に基づく裁判所の競売による場合には、当事者による更正申請はできません。その場合は、裁判所書記官による「嘱託登記」によって修正手続を行う必要があります。

登記の「同一性」とは?―更正登記が許される境界線

更正登記が認められるためには、「登記の同一性」が損なわれていないことが条件です。つまり、登記の修正が「内容の一部修正」で済むような場合には更正登記が認められます。

同一性が保たれている例

  • 登記されている人物が、本来の所有者の一部(例えば共有者の一人)である。
  • 登記名義の一部が間違っているが、登記そのものを大きく変える必要はない。

(例)乙・丙の共有物件が乙単独になっている → 丙を加えることで本来の形に戻る

同一性が失われている例

  • 本来無関係な人物が名義人として登記されている
  • 所有者が全く異なる(実はCが所有していたがDの名義になっている)

このような場合には、更正登記は認められず、「真正な登記名義の回復」という別の手続きが必要になります。

比較項目 更正登記 真正な登記名義の回復
誤りの内容 錯誤・記載漏れなど 無権利者による登記など
同一性の要件 必要 不要(そもそも無効な登記)
手続き 登記関係者の共同申請 訴訟や登記抹消+新規登記
典型例 本来の共有者が漏れていた 詐欺や背任で他人名義にされた

「同一性」が保たれている場合であれば、比較的スムーズに更正登記が進められる可能性がありますが、真正な登記名義の回復の手続きは非常に複雑なケースとなります。

更正登記の記録内容

申請が受理されると、登記記録には以下のような情報が反映されます。

  • 登記の目的:「○番所有権更正」
  • 登記原因及び日付:「錯誤」と記載(具体的な日付は不要)
  • 更正後の事項
    • ケース①:「共有者 乙 持分○分の○、丙 持分○分の○」
    • ケース②:「所有者 乙」

利害関係を有する第三者がいる場合には、その承諾書や裁判記録などの提出が必要になる場合もありますが、今回のように利害関係人がいない場合は不要です。

登記の内容に心当たりがある方や、「登記が本当に正しいのか確認したい」という方は、お一人で悩まず、ぜひ当事務所にご相談ください!