Last Updated on 2025年4月21日 by 渋田貴正

外国で書かれた遺言は日本で有効?

最近は海外に住む日本人や、外国籍の方が日本に不動産を持っているケースが増えています。そのため「外国で作成した遺言で、日本の不動産を相続できるのか?」というご相談を受けることが少なくありません。

結論から申し上げると、一定の要件を満たせば、外国で作成された遺言によって日本の不動産を相続することは可能です。ただし、登記や税務の手続きにあたっては、日本の法律に基づいた確認が必要となります。

相続における準拠法(どの国の法律が適用されるか)は、まず被相続人の本国法によって決まります。

(相続)
法の適用に関する通則法 第36条 相続は、被相続人の本国法による。
判定の基準 内容
本国法が日本 日本の相続法が適用される
本国法が外国 外国の相続法が適用される

つまり、日本に不動産があるからといって必ず日本法が適用されるとは限りません。被相続人が外国籍であれば、その国の法律にしたがって遺言の有効性や相続分が判断されることになります。

外国で作成された遺言の形式はどう判断される?

遺言については、考えなければならない法的なポイントが2つあります。それは形式的な有効性と実体的な有効性です。

【形式的有効性とは?】

形式的有効性とは、遺言書がどの国の法律に基づいて作成されたか、そしてその法律に合致しているかを判断するものです。これは前述のとおり「遺言の方式の準拠法に関する法律」によって、日本でも一定の外国形式が認められています。

【実体的有効性とは?】

一方で実体的有効性とは、遺言の内容が日本の登記や税務の制度に合致しているかどうかを意味します。

たとえば、遺言書に「すべての財産をAに譲る」とだけ書かれている場合、それが日本にある不動産を特定していないのであれば、相続登記に必要な「承継対象の特定性」が不足する可能性があります。

このような場合には、相続関係や遺言内容を補う資料や説明書面が求められることもあります。

 

判断基準 内容 関係する法律
形式的有効性 遺言の書き方・証人の有無など 遺言の方式の準拠法に関する法律
実体的有効性 誰に・何を・どのように相続させるか 相続法、民法、不動産登記法など

形式の有効性については、「遺言の方式の準拠法に関する法律」により、以下のいずれかの方式に合致していれば、日本でも有効と認められます。

【認められる遺言の方式】

認められる方式 適用される条件
遺言作成地の方式 作成した場所の法律に合致
遺言者の本国法 本国の方式に合致
遺言者の常居所地法 住んでいた場所の方式に合致
不動産所在地の法律 日本法(日本にある不動産)

たとえばアメリカ在住の方が現地法にのっとって遺言書を作成していれば、それは日本の登記実務においても有効な「遺言書」として取り扱われる可能性があります。

あとは、実態としてその遺言書の通りの内容が実行できるかどうかについてですが、それは相続の準拠法に依って検討することになります。

実際に海外の遺言で日本の不動産登記するにはどうするの?

外国の遺言があっても、それだけでは日本の不動産の相続登記はできません。追加手続きが必要になります。

【必要な手続きの例】

  1. 遺言書の翻訳
     → 専門家による正確な日本語訳が求められます。
  2. 現地の認証・証明
     → 公証人の証明、アポスティーユ、領事認証など。
  3. 日本の家庭裁判所での検認

これらを踏まえ、実際の登記申請では、通常の日本国内の相続登記よりも書類の種類も多く、手続きも煩雑になる傾向があります。

海外の遺言と相続税の関係

海外で作成された遺言を使って日本の不動産を相続した場合でも、日本国内での相続税申告は必要です。

特に以下のケースでは日本の相続税の課税対象となります。

課税対象となる例 内容
被相続人が日本に住所を有していた 所得税法上の居住者
相続人が日本に住所を有している 日本国内資産が対象
不動産が日本にある 国内財産として課税対象(相続税法1条)

遺言が外国の法律に基づいていても、日本の不動産に関する相続税は日本の税法に従って申告・納税が必要となります。

外国で作成された遺言であっても、日本の法律や登記実務に沿っていれば、日本にある不動産を相続することは可能です。しかし、相続税の申告や登記の実務は複雑で、専門的な知識が求められます。

当事務所では、外国で作成された遺言をもとにした日本国内の登記・税務手続きについて、豊富な実績と専門的な知見があります。書類の整備から登記・税務申告まで、ワンストップでご対応いたします。

外国の遺言で日本の不動産を相続されるご予定がある方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。