Last Updated on 2021年11月8日 by 渋田貴正
不動産の相続の放棄をするには?
相続では、現預金や有価証券、不動産といった財産について、その権利を引き継ぐことができます。なかでも最も相続時に分割が難しいのが、不動産です。現預金などのように分割することができず、その相続人もその不動産に住まなければ、売却などを通して現金化するといったプロセスも発生します。
さらに、例えば相続人が全員都市部で暮らしていて、田舎の土地も容易には売却できなさそうといったケースでは、そもそも不動産の相続自体をしたくないというケースもあります。
こうしたときに相続人としてはどのような方法が取れるのでしょうか?
対応その1 相続放棄
相続放棄をすることで、不動産の相続を放棄することができます。しかし、相続放棄は、もともと相続人ではなかったものにする制度です。相続放棄をすれば、不動産だけではなく、現預金などその他の財産も相続することができなくなります。もし不動産を相続したくないという理由で相続放棄するなら、ほかの現預金がほぼない、または相続財産に現預金があったとしても相続を諦めてでも不動産を引き継ぎたくないといったケースが考えられます。
対応その2 国庫帰属法の活用
国庫帰属法(令和3年4月28年公布、公布から2年以内に施行)を活用することで、相続財産のうち、土地だけを国庫に帰属させることが可能となります。国庫帰属法は相続した土地にターゲットを絞った法律なので、相続放棄の手続きを経ることなく不動産の相続だけを行わないということができます。
ただし、国庫帰属法はどのような土地にも使えるわけではありません。まず土地が対象なので、建物は対象外となります。そのほかにも国庫帰属法を利用して土地を国庫に帰属させるにはいくつかの条件があります。また、国庫に管理を委託する費用を支払う必要があるなど、利用にあたって検討する事項があります。
いずれにしても、不動産の相続を行わないためには、何らかの犠牲(相続放棄や国への管理費用の支払い)を伴います。引き継ぎたい財産だけを相続するといった、いいとこどりは難しいということです。
さらに相続登記の義務化によって、特定の不動産だけを相続登記しないという選択肢もなくなります。不動産を相続した場合、たとえ引き継ぎたくないものであっても、相続人として何らかのアクションが必要になってくるでしょう。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。