所有不動産記録証明制度とは?

登記された不動産には、不動産ごとに登記記録が作成されます。しかし、この登記記録はあくまで不動産ごとのもので、自治体が発行する名寄帳のように所有者ごとにリスト化できるわけではありません。

しかし、相続登記の義務化など、所有者ごとにどのような不動産を保有しているかということをリスト化することは、今後ますます重要になってきます。所有者ごとに不動産がリスト化されれば、そのリストをもとにもれなく相続登記を行うことができます。そのため、改正された不動産登記法では、そうしたリストの創設が定められています。このリストを「所有不動産記録証明書」と言います。

この所有不動産記録証明書があれば、相続登記の際に登記漏れを防ぐことができ、相続登記の義務化と相まって所有者不明土地の発生も防止できるようになります。所有不動産記録証明書は所有している不動産を全国的に網羅できるので、自治体が発行する名寄帳などの一覧以上に所有不動産の確認に役立つでしょう。特に都会暮らしの人が田舎に住む親の不動産を相続した際に、実家以外の自治体にちょっとした不動産を保有していたけどそのことを知らずに相続登記ができていなかった、といったことが生じることがありますが、所有不動産記録証明書で全国の不動産を確認すればこうした事態を防止することもできます。

また、相続登記以外にも、例えば遺言作成時の不動産の確認や、大規模な法人が自社名義の土地の一覧が必要であるというときなどにも活用が期待できます。

しかし、こうした所有不動産記録証明書を作成するには、いくつかの情報が必要です。氏名で絞っても同姓同名の人は全国に数多くいますし、住所と氏名で絞っても登記上の住所を変更していないということや、万が一同じ住所で同じ名前の別人がいないとも限りません。

そのため、所有不動産記録証明書が実際に稼働して有効な情報になるには、登記上の住所が最新である必要がありますし、生年月日などの3つ目の照合情報が必要となります。そのあたりは、登記記録への生年月日情報の追加や、住所氏名等の変更登記の義務化と合わせて運用されていくものと思われます。

所有不動産記録証明書の請求者

所有不動産記録証明書を請求出来る者は、「自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定める者)」と定められています。また、相続人や包括受遺者などの一般承継人は、被相続人の所有不動産記録証明書の発行を請求することができます。

また、代理人による請求も可能になると思われますが、所有不動産記録証明書はプライバシーなどを含む内容になっているため、代理人の範囲や委任の方法などはこれから定められていくものと思われます。

不動産登記法 119条の2

何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という)の交付を請求することができる。

2相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。