相続とインボイス制度の関係

2023年10月1日からインボイス制度が始まります。インボイス制度は主に事業者が関係することになりますが、相続の発生に伴ってインボイス制度に注意を払う必要はあるのでしょうか?

相続税の計算や、相続不動産の売却による所得税の計算についてインボイス制度が関係することはありません。インボイス制度はあくまで消費税の計算に影響するものだからです。

相続でインボイス制度が関係してくるケースはあるとすれば不動産賃貸業を営んでいた被相続人が亡くなって、その不動産賃貸業を引き継いだ相続人がいるケースや、個人事業主だった被相続人の事業を引き継いだ相続人がいるケースです。もともと事業を行っていない人(たとえば会社員)が事業を相続した場合には、相続人本人だけでなく被相続人が稼いでいた売上で消費税の納税義務を判定することになります(相続があった場合の消費税の納税義務の判定)。

課税事業者になればインボイス制度の適格事業者として登録するのが通常ですが、被相続人が居住用のアパート賃貸を行っていたケースのように、そもそも免税事業者だった被相続人の不動産賃貸業を引き継いだような場合には適格事業者として登録する必要はないでしょう。オフィス物件のオーナーであれば課税事業者であるケースが多いので、オフィス賃貸業を営んでいた被相続人を相続した場合には登録について検討が必要になります。

適格事業者の登録は相続では引き継がれない

もともと不動産賃貸業や個人事業を営んでいなかった相続人が被相続人の事業を引き継いだ場合で、被相続人がインボイス制度の適格事業者として登録を済ませていたとしても、相続人にその効力が相続されることはありません。相続人がインボイス制度の登録を受けたければ新たに相続人が適格事業者としての登録申請を行う必要があります。

ただし、2023年10月1日以降に相続が発生した場合で、被相続人が適格請求書発行事業者であった場合には、相続発生によってすぐに適格事業者の登録が失効するわけではなく、一定期間だけその効力が存続します。

相続発生後、相続人は「適格請求書発行事業者の死亡届出書」という書類を税務署に提出する必要があります。そして、その届出書を提出した翌日か、相続から4か月後に被相続人の適格事業者の登録が失効することになります。相続後も最長4か月は被相続人の適格事業者の登録を生かしておくことで、遺産分割でだれが事業を引き継ぐのかということについて猶予を持たせているということです。相続人としては、その間に事業を引き継ぐ人を決めて相続人として適格事業者の登録を行うということになります。