個人間のお金の貸し借りには利息を取る必要はない
親族間など個人同士でお金を貸し借りした場合には、そのお金について返済の条件などが明確になっていないと実質的には贈与となって贈与税を支払うことになります。(それが住宅資金の贈与など特例に該当する場合は除きます。)
もちろん、金融機関から借りたときと同じように実際に返済条件を決めてその通りに返済を行っているのであれば、それは借りたお金を返済しているだけなので、たとえ親族間でお金のやり取りがあったとしても贈与とは扱われず、贈与税を納める必要はありません。そこで問題になってくるのが利息の取り扱いです。金融機関であれば商売としてお金を貸しているので借りた側には当然利息の支払いが発生します。それでは親族や知人間のお金の貸し借りであっても利息を取る必要はあるのでしょうか?
結論から言うと、個人間のお金の貸し借りについて利息を付ける必要はありません。利息を付けないと借入と扱われず贈与税が課税される、といった言説もたまに見かけますが、そんなことはありません。無利息であっても、借りた側からすれば返済終了までの期間で考えると借りたお金を返しているだけなので名目上は1円も得していません。さすがにそれに対して贈与税を課税することはできません。もちろん利息を付すことはできます。ただ、利息を受け取った側には所得税(雑所得)が課税されます。
ただし、利息をつけなくてよいからといって、元本を返済しなくてもよいというわけではありません。元本まで「出世払い」を認めてしまうと、それは贈与になる可能性があります。
親族間など個人同士のお金の貸し借りについては利息はつけなくても問題ありませんが、返済はしっかりと時期を金額を取り決めて行う、といったことが贈与として扱われないために重要です。
会社からお金を借りたときの税金の扱いは、個人間とは異なる
もしかしたら会社経営をしている親族がいれば、その会社からお金を借りるということも考えられます。そのため、会社からお金を借りる際には利息が必要なのかも考えてみます。
会社とは営利を追求する存在です。そのため、会社の資金からお金を貸す際にも無償ということは基本的にあってはいけません。そのため、会社から個人にお金を貸す場合には利息を付与する必要があります。もし会社が無利息で個人にお金を貸したとしたら、税務上は本来取るべきであろう利息(適正利率)を取ったうえで、再度それを贈与したという風に考えます。つまり、個人側から見れば会社から利息分の贈与を受けたような形になります。無利息で会社からお金を借りた個人側で課税されるのは、贈与税ではなく所得税です。なぜなら贈与税は個人間の贈与にのみ適用される税金だからです。確定申告の際には「雑所得」で申告することになります。
この場合に利息を計算するときの利率は以下の適正利率を用います。
ただし、会社が金融機関からお金を調達して、それを個人に又貸しした場合は、もともと金融機関から借りた時の利息を使います。(会社経営者として、親族にお金を貸すのにそこまですることはないかもしれませんし、場合によっては金融機関への背信にもなりますし。)
お金を貸した日が属する期間 | 適正利率 |
2010年から2013年 | 4.3% |
2014年 | 1.9% |
2015年から2016年 | 1.8% |
2017年 | 1.7% |
2018年から2020年 | 1.6% |
2021年 | 1.0% |
2022年 | 0.9% |
他者から借り入れして、また貸しした場合 | もともと借りた時の利率 |
とはいえ、会社側でもややこしい会計処理が必要になることを考えると、親族間でお金を貸し借りするなら、会社を通してではなく個人間で行う方がよいでしょう。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている