生活費はワリカンしないといけない?
家族で一緒に住んでいると、その生活費をだれが負担するのかということは家族内で話し合って決めるのが一般的です。共働き夫婦であればお互いに同じ額ずつ生活費を出すという場合もあれば、いずれか一方の稼ぎが多ければ他方が出すということもあるでしょう。
さらに、もし祖父母が資産家であれば家族全員の生活費を一手に引き受けるということもあるかもしれません。こんな時に、家族の生活費はそれぞれが負担すべきだから、ほかの家族から生活費を出してもらった場合は贈与税や相続税の計算上、贈与や貸付扱いになるのではといったことを心配される方がいらっしゃいます。
しかし実際にはこのようなことはありません。基本に立ち返って家族に関することを定めている民法では以下のように規定されています。
(扶養義務者)
民法 第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
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「扶養」とは、簡単に言えば生活に関する経済的な援助です。民法で義務として定められている以上、直系血族である祖父が子や孫の生活費の面倒をみたことが贈与や貸付に該当するということは考えられません。
さらに相続税法でも以下のように定められています。
(贈与税の非課税財産)
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扶養義務者とは、相続税の中では民法での「直系血族及び兄弟姉妹」のほかに配偶者や三親等内の親族も含まれます。
このように定められている以上、生活費を扶養義務者のいずれかが一手に引き受けるということは社会的に当然のことであり、そこについて税務署が貸付だの贈与だのということを指摘することはできません。結局一番お金を持っている人が家族の食費その他の生活費を全額負担することは全く問題ありません。
扶養を超えた金額をやり取りすれば贈与になることもある
ただし、これはあくまで「生活費や教育費」に限ります。それ以外で家族間でお金をやり取りすれば、それは贈与になります。例えば、生活費として毎月20万円を渡されていても、本当の生活費は毎月10万円であり残ったお金については返金する必要がなく好きに使ってよいといったケースでは、暗黙のうちに贈与をする意思表示と贈与を受ける意思表示があり、贈与契約が成立していることになります。差額の10万円は毎月私的に蓄財(ヘソクリ)していたという場合は、その分は贈与です。毎月10万円生活費を浮かせて蓄財していけば年間120万円の贈与が成立していて、110万円を超える額について贈与税の課税対象になります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている