相続が発生したとき、相続財産の中に不動産があれば遺産分割協議書(遺言があれば遺言)でその不動産を相続する人を決めることは多いです。
それでは、その不動産の中にある家財道具などはどうなるのでしょうか?通常であれば、相続財産である建物の中にある家具や家電については、建物と一緒に建物の相続人が取得するということが遺産分割協議を行った場合の相続人の共通認識でしょう。しかし、建物の相続人とは別の相続人が、あえて特定の家具や家電だけは引き取りたいといった場合(いわゆる「形見分け」など)については、ある程度の価値があるものであれば遺産分割協議書で残しておいた方がよいでしょう。(例えば高級腕時計のようなものなど)
しかし、形見のように相続人としては価値が合っても、処分価値という意味で価値がない動産についてまで遺産分割協議書で逐一残しておくのは実際には不可能です。そのため、通常は不動産を相続した相続人がその中の動産も引き取るということが暗黙の了解になっているということです。もちろん、このことは不動産を引き継いだ相続人が中にある動産を当然引き継いだことになるというわけではありません。
動産について所有権を明確にしておくのであれば、主だったものだけでも遺産分割協議書に残して相続人間で合意を形成しておくことをおすすめします。
遺贈の場合の動産
相続人がいれば、動産も遺産分割協議などで対応することができますが、もし相続人がいないケースで遺言により遺贈が行われた場合はどのようになるのかという問題があります。
もし遺言の中に、「不動産及び同不動産内に存する家財道具等の動産全てを,○○に遺贈する。」のように書いてあればその通りに受遺者が取得できますので、不動産内の動産も受遺者が取得することになります。しかし、このように動産についてまで言及しているケースは公正証書遺言などでもない限りはレアなケースです。
そのため、もし動産の取り扱いについて遺言内に記載がなければ、本来的にはその動産は相続人がいない財産として「相続財産法人」行きとなります。(ただ、現実的には不動産を取得した受遺者が中の動産は自由にできないとなると、不動産も実質的には自由に使えませんし、それはわざわざ遺言を残した遺言者の意思にも反しているといえます。そのため、実際には受遺者が内部の動産も自由に使ったり処分したりするケースは多いです。この辺りは心配であれば専門家に相談したほうがよいでしょう。)
動産の付合
余談となりますが、動産には「付合」という考え方があります。
民法 (不動産の付合)
第242条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
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付合とは、持ち主が異なるもの同士が分離困難な状態にあることをいう法律用語です。
もし、とある動産が不動産に符合している場合、不動産の所有者がその動産を取得できます。例えば、建物を取得した相続人や受遺者がいて、その建物を取り壊したり、一部を破壊したりしない限り分離できないような動産があれば、その動産の所有権は不動産を相続した相続人などが取得できるということになります。ただ、動産が不動産に符合するということは滅多にないかもしれません。本当に余談程度にとらえていただければと思います。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている