無国籍の人の相続準拠法

無国籍者とは、その名の通りいずれの国にも国籍を有しない人です。また、相続の世界では国籍不明の人も無国籍者として扱われます。

このような無国籍者について相続があった場合はどの国の法律を適用すべきかという問題があります。

国際相続については被相続人の本国法、つまり被相続人の国籍がある国の法律を適用することになりますが、無国籍者については本国法が存在しません。この場合は、常居所(常居所がない場合は居所)の国の法律を適用することになります。

法の適用に関する通則法(常居所地法)
第39条 当事者の常居所地法によるべき場合において、その常居所が知れないときは、その居所地法による。(後略)

日本に住んでいる無国籍者であれば、日本が常居所となる可能性が高いので、その場合は日本の民法が適用されることになります。

日本にいる無国籍者は600人足らずともいわれているので、無国籍者の相続にお目にかかる場面はほぼないかもしれませんが、法律の適用関係を考えるためのよい実例といえます。

無国籍の状態が発生する例

上記の通り無国籍者が発生する場面というのはそれほど多くありません。無国籍者が発生するようなケースとして考えられるのは以下のような場面です。

1)親の国籍がある国が出生地主義を採用している一方、子の出生国が血統主義を採用する場合
2)他国に帰化申請するために出身国の国籍を放棄後に帰化が不許可となり、もとの国籍も回復できない場合
3)特に血統主義の国で、親がどちらも無国籍である場合に親の国籍を引き継ぐことができない場合
4)出生登録が行われておらず、その子供は法的に存在が証明されず、国籍を持たないと見なされる場合

他にも特殊事例は数多く存在しますが、いずれにしても無国籍の状態というのは全体の割合からすればかなりのレアケースであり、もし無国籍者の相続が発生すれば、確実に手続きを進めるためにも国際相続に強い専門家に依頼することをおすすめします。

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