発信主義と到達主義の違い
そもそも発信主義と到達主義とは、意思表示の効力発生時期をいつ時点にするかということを決めるための考え方です。
民法上の意思表示については以下のように定められています。
(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
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このように意思表示については、「相手方に到達したとき」を効力発生時期としていて、到達主義が原則となっています。もともと契約の申込みに対する承諾は発信主義を採っていましたが、メールやLINEなど意思表示の通信手段が一般的になったため、発信主義は民法の改正によって廃止されました。
そのため、今となっては到達主義と発信主義の違いを論じることはあまり意味がありませんが、違いは以下の通りです。
到達主義(原則) | 発信主義 | |
意思表示の効力発生時期 | 相手方に到達したとき | 意思表示が発信されたとき |
意思表示が到達しなかったときの不利益 | 発信者が負う | 相手方が負う |
民法の原則は到達主義で統一されましたが、契約で到達主義を排除して発信主義を採ること自体は可能です。
到達主義の「相手方に到達した時」とは?
到達主義の下では、意思表示は、その通知が相手方に到達したときに効力を発揮します。それでは「相手方に到達したとき」というのはどのタイミングをいうのでしょうか?
簡単にまとめると、「相手方に到達した時」とは「相手方がいつでも確認できる状態になった時」をいいます。例えば以下のような状態はすべて相手方に到達しているといえます。
・メールであれば相手の受信BOXに入った時
・LINEであれば相手方に通知が届いた時
・郵便であれば相手方の郵便受けに投函されたり、内容が推測できるような不在票が届いた時
相手がいつでも内容を確認できる状態にあればよいわけで、その内容が既読かどうかは関係ありません。相手方にとって不利な内容で相手が無視した場合でも届いている以上は到達しているので効力は発生しています。
到達主義と相続の関係
到達主義は意思表示に関することなので、遺産分割協議など相続人全員の合意によって行う行為には直接関係しません。相続関係で関係してくるとすれば以下のような場面です。
・遺留分侵害額請求権の行使
・相続放棄の熟慮期間の繰り下げにおける被相続人に債務があった旨の通知
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている