Last Updated on 2024年6月7日 by 渋田貴正
遺産分割協議成立後に遺産分割協議書への押印を拒絶する相続人がいるときの対応
遺産分割協議が終了し、遺産分割協議書の作成が完了したにもかかわらず、その後相続登記や口座解約のために各相続人に実印の押印を求めたところ、特定の相続人が実印の押印に協力してくれなくなったというケースがあります。
このような場合、遺産分割協議自体は成立しているので有効です。遺産分割協議は相続人の合意によって成立し、民法上特別の様式は指定されておらず口頭でも成立します。そのため遺産分割協議書の作成は法的に必要というよりは、相続人同士で遺産分割協議の内容を書面に残しておいて後日の紛争を防ぐ契約書的な意味合いと、遺産分割協議書を使用して登記や口座解約などの相続関係の手続きを行うといった手続き的な意味合いを持つ書面です。
結局は、遺産分割協議が有効に成立しているからと言っても、相続人が遺産分割協議書に押印をしてくれなければ相続登記や口座解約の手続きが進みません。本人に言っても遺産分割協議書への実印の押印を拒絶しているのであれば、やはり裁判で判決を得て本人の実印の押印の代わりにするということが必要になってきます。
この場合は、遺産分割協議によって相続人全員の意思に基づいて成立したことを確定するために、遺産分割協議が有効に成立しているということで所有権確認の訴えを提起することになります。この訴えで勝訴の確定判決を得れば、確定証明書が付いた証書判決の判決書謄本を印鑑証明書の提供を拒む相続人の実印の押印に代えることができます。
遺産分割協議書作成後に印鑑証明書の提供を拒絶する相続人がいるときは遺産分割協議書の真否確認の訴えを提起するので、遺産分割協議書への押印の有無によって行うべき確認が異なってきます。
実印の押印がもらえない場合、提訴するのは所有権の確認
なお注意しておかなければならないのは、あくまで提起するのは真否確認の訴えです。印鑑証明書なしで相続登記の申請ができるといった趣旨の訴えで証書したとしても、そもそも相続登記が単独申請であり、他の相続人に登記義務者として相続登記を命じることはあり得ません。あくまで相続登記の前提としての遺産分割協議書そのものが真であるということを訴訟で確認することになります。
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司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。