台湾国籍の被相続人の相続放棄の可能性

日本在住の台湾国籍の方が亡くなったときの相続放棄の可能性についてまとめました。

相続放棄に関わらずですが、台湾(中華民国)についてはその他の国にはない独自の問題があります。それは、そもそも台湾の法律を準拠法として扱ってよいのかということです。日本が国際的に正当政府として認めていない関係で建前としては台湾国籍ということも認めないということになります。この点は国際的な政治問題であり、実務としてはそのことを前提にする必要があります。

その点については、以下の条文を類推適用することになります。

法の適用に関する通則法(本国法)
第38条
(中略)
3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

上記の条文は二重国籍の件ですが、中華人民共和国と台湾の法律をあたかも二重国籍のように考えて密接関係地法、つまり台湾の法律を適用するという扱いになっています。理屈はさておき、台湾国籍の人は台湾の法律に基づいて相続関係を判断してよいということになります。

上記が整理できた段階で、次に日本で相続放棄の管轄権があるのかということを検討します。

家事事件手続法

第3条の11 裁判所は、相続に関する審判事件(中略)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

上記の通り、日本に最後の住所があった場合には、台湾国籍の被相続人であっても日本の家庭裁判所が管轄権を有します。

しかし、もう一点そもそも台湾の法律で相続放棄という制度があるかどうかという問題があります。いくら日本の家庭裁判所が管轄権を有していても、そもそも本国の法律で相続放棄が定められていなければ相続放棄をすることはできません。

その点、台湾の民法では相続放棄の制度が規定されているため、相続放棄することは可能です。

ただし、台湾で相続放棄が認められているということを証明するために台湾の法律を調査して、該当する条文を提出するなど、日本国籍の被相続人の相続放棄よりも必要書類が多くなります。

台湾国籍の被相続人の相続放棄については、当事務所のように国際相続に詳しい専門家に依頼することをおすすめします。

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