相続債務をめぐる包括承継主義と管理清算主義の違い

国際相続においては、被相続人の国籍によって適用される国の法律が決まります。

そして国によっては被相続人が残した債務は相続しないという場合もあります。

そもそも相続のスタイルについては、包括承継主義と管理清算主義という2種類があります。

包括承継主義 被相続人の死亡の事実そのものによって、被相続人の財産が包括的に相続人に帰属する考え方 日本・ドイツ・フランスなど
管理清算主義 被相続人の財産は、いったん管理者(遺言執行者や遺産管理人)に帰属し、積極財産と消極財産を清算後、相続人に分配する考え方 アメリカ・イギリス・フィリピンなど

例えば日本では包括承継主義を採用しています。日本では、相続人が特にアクションを起こさなければ被相続人が残した遺産は不動産や預貯金などの正の遺産だけでなく借金などの負の遺産も引き継ぎます。

そして、債務を引き継ぎたくないといった場合には、限定承認相続放棄といった手続きを家庭裁判所で行うことになります。

一方、管理清算主義を採用する国では相続に対する考え方が異なります。管理清算主義では、遺産は直接相続人が取得するわけではなく、「人格代表者」という存在に引き継がせるという考え方を採ります。日本の相続財産法人のようなものかもしれません。

管理清算主義のもとでは、この人格代表者と被相続人の債権者の間で相続財産と債務を清算したのち、残余財産が残っている場合に各相続人に残余財産を配分するという流れになります。そのため、残余財産がなければ相続人は相続財産を取得できないだけで、さらに残った相続債務を負担するということはありません。日本などの包括承継主義では相続放棄など積極的に相続人がアクションしないと相続債務を引き継いでしまうという点と大きく異なります。

しかし注意しておかなければならないのは、相続債務を相続することがないというのは正の財産だけを相続できるということではないということです。包括承継主義にしても管理清算主義にしても借金などの負の遺産を無視して正の財産だけを相続できるということはありません。両者の違いは負の財産を相続したくない場合に積極的に相続人が動く必要があるかどうかという違いです。いずれの場合もいいとこどりができるというわけではないということです。

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