国籍の血統主義と出生地主義

当事務所では国際相続を業務として行っているため、特に被相続人の国籍には様々な方がいらっしゃいます。そこで、今回は国籍を決めるためのルールについてまとめました。

日本では国籍について以下のように定めています。

   国籍法 第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

上記のように日本では両親のいずれかが日本国籍を持っていれば日本国籍を取得することになります。これを血統主義といいます。一方で、生まれた場所によって国籍を取得する考え方を出生地主義といいます。

両者の主な違いは以下の通りです。

項目 血統主義(Jus Sanguinis) 出生地主義(Jus Soli)
定義 親の国籍に基づいて子供の国籍が決まる。 出生地に基づいて子供の国籍が決まる。
取得条件 子供が出生時に親のいずれかがその国の国籍を有していることが条件。 子供が出生した国がその国の国籍を自動的に付与する。
主な適用国 日本、ドイツ、韓国、イタリア、スイスなど アメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンなど
子供が外国で出生した場合 親がその国の国籍を持っていれば、子供もその国の国籍を取得可能。 出生地が外国であれば、その国の国籍は原則取得できない。
子供が無国籍となるリスク 親が無国籍であったり、特定の条件を満たさない場合、子供が無国籍になる可能性がある。 出生地が国籍を付与するため、無国籍になるリスクは低い。
帰化の必要性 両親とも外国人であれば、その子供が国籍を取得するためには帰化が必要。 両親の国籍に関係なく、出生した国で国籍を取得するため帰化不要。
各国の国籍の決定方法

国籍の決定方法は国によってさまざまです。

1. 日本

  • 血統主義:日本は血統主義を採用しており、出生時に両親のいずれかが日本国籍を持っていれば、子供も日本国籍を取得します。
  • 帰化:一定の条件を満たす外国人が日本国籍を取得できる。

2. アメリカ

  • 出生地主義:アメリカで生まれた人は、両親の国籍に関係なく自動的にアメリカ国籍を取得します。
  • 血統主義:アメリカ国籍を持つ親から生まれた子供もアメリカ国籍を取得可能。
  • 帰化:米国で一定の居住期間を満たした外国人が帰化申請できます。

3. フランス

  • 出生地主義:フランスで生まれた子供はフランス国籍を取得する場合がありますが、親の国籍や居住歴に影響されます。
  • 血統主義:フランス国籍の親のもとに生まれた場合はフランス国籍を取得可能。
  • 帰化:フランスに一定期間住むなどの条件を満たすことで帰化可能。

4. ドイツ

  • 血統主義:ドイツ国籍の親の子供はドイツ国籍を取得できます。
  • 出生地主義:1999年以降、ドイツで生まれた子供も一定条件下で国籍を取得できます(例:両親のいずれかが長期間ドイツに居住している場合)。
  • 帰化:8年以上の居住や他の条件を満たすことで帰化可能。

5. イギリス

  • 血統主義:イギリス国籍を持つ親の子供は自動的にイギリス国籍を取得します。
  • 出生地主義:イギリスで生まれた子供も、親の一方がイギリス国籍者または永住者であれば国籍取得可能。
  • 帰化:イギリスに一定期間居住した外国人が帰化申請できます。

6. カナダ

  • 出生地主義:カナダで生まれた子供は自動的にカナダ国籍を取得します。
  • 血統主義:カナダ国籍の親から生まれた子供も国籍取得可能。
  • 帰化:カナダに一定期間居住し、他の条件を満たすことで帰化できます。

7. オーストラリア

  • 出生地主義:1986年以降、オーストラリアで生まれた場合、両親のいずれかが永住者か市民であれば国籍を取得できます。
  • 血統主義:オーストラリア国籍の親から生まれた子供も国籍を取得可能。
  • 帰化:永住権保持者が一定の条件を満たすことで帰化可能。

8. スイス

  • 血統主義:スイス国籍の親を持つ子供は国籍を取得できます。
  • 出生地主義:出生地主義は採用しておらず、スイスで生まれただけでは国籍を取得できません。
  • 帰化:スイスで長期間居住し、統合要件を満たすことで帰化可能。

9. 中国

  • 血統主義:中国は基本的に血統主義を採用しており、中国国籍の親を持つ子供は中国国籍を取得可能。
  • 出生地主義:中国では原則として出生地主義を採用していませんが、両親が無国籍者であれば中国で生まれた場合に国籍取得が可能。
  • 帰化:外国人が特定の条件を満たすことで帰化可能ですが、非常に厳しい基準があります。

10. 韓国

  • 血統主義:韓国国籍の親を持つ子供は自動的に韓国国籍を取得します。
  • 出生地主義:出生地主義は採用しておらず、韓国で生まれただけでは国籍を取得できません。
  • 帰化:特定の条件を満たす外国人が韓国国籍を取得可能。

11. インド

  • 血統主義:インド国籍の親を持つ子供は国籍を取得できます。
  • 出生地主義:インドでは出生地主義は採用しておらず、国籍は親の国籍によります。
  • 帰化:インドに長期間居住するなどの条件を満たすことで帰化可能。

12. ブラジル

  • 出生地主義:ブラジルで生まれた子供は自動的にブラジル国籍を取得します。
  • 血統主義:ブラジル国籍の親を持つ子供も国籍を取得可能。
  • 帰化:ブラジルに一定期間居住し、他の条件を満たすことで帰化可能。

13. メキシコ

  • 出生地主義:メキシコで生まれた子供は自動的にメキシコ国籍を取得します。
  • 血統主義:メキシコ国籍の親から生まれた子供も国籍を取得可能。
  • 帰化:一定の条件を満たす外国人がメキシコ国籍を取得可能。

14. イタリア

  • 血統主義:イタリア国籍の親を持つ子供はイタリア国籍を取得できます。
  • 出生地主義:イタリアで生まれただけでは国籍を取得できませんが、一定の条件下で国籍を申請できます。
  • 帰化:イタリアで長期間居住することで国籍を取得可能。

15. ロシア

  • 血統主義:ロシア国籍の親を持つ子供はロシア国籍を取得できます。
  • 出生地主義:ロシアでは出生地主義は一般的に採用されていません。
  • 帰化:ロシアに一定期間居住し、他の条件を満たすことで帰化可能。

被相続人や相続人が外国籍である場合の相続手続きについては、当事務所までお気軽にご相談ください!

👉今すぐ無料相談