法律にはしばしば「公文書」と「私文書」というワードが出てきます。ニュースだと「公文書偽造」みたいなワードが出てくることがあります。実際に法律の仕事をしていると、この公文書と私文書の違いは重要ですが、日常でもしばしば耳にする言葉ですので、違いをここでまとめておきます。
公文書とは、国や地方公共団体、またはその機関が「職務上」作成・保管する文書やメールなどを指します。また、公証人が作成する公正証書も公文書に当たります。公証人は法的には公務員ではありませんが、国のために公証業務を行う実質的な公務員といえます。その公証人が、職務上作成した文書も公文書です。
公文書に該当するかどうかにおいて重要なポイントは「職務上」作成した文書であるかどうかです。例えば公務員や公証人が作成した文書であっても、個人的に作成した業務マニュアルや正式な報告書になる前の下書き文書などは公文書には該当しません。具体的に「職務」に該当するかどうかを判断するには以下のようなポイントがあります。
職務 | 内容 | 例 |
---|---|---|
法律や規則に基づく業務 | 法律や規則、行政指針や命令に基づいて遂行される職務 | 申請の受理、行政文書の作成・保存 |
公務の遂行に必要な活動 | 組織や機関の目的達成のために必要とされる業務 | 政策立案、予算編成、議事録作成 |
公的な目的に基づく業務 | 公共の利益や市民サービスの提供を目的とする活動 | 市民窓口対応業務、住民票発行 |
職務記述書や役職規定に基づく業務 | 公務員の職務記述書や役職規定に明記された内容に基づいて行われる業務 | 業務指示に基づく報告書の作成 |
組織の指揮命令系統内の業務 | 上司の指示や命令に基づき、組織内で遂行される業務 | 上司の指示に従った統計データの作成 |
職場の正式な機能としての業務 | 職場が公式に機能するために行われる業務 | 会議で採択された議事録作成 |
公証業務 | 公証人が法律に基づき、公的な信頼を保証するために行う業務 | 公正証書遺言、その他の公正証書 |
一方の私文書とは、企業や個人などが作成した文書です。また、公務員や公証人が作成した文書でも、それが職務遂行上作成された文書でなければ公文書ではなく私文書に該当します。
公文書の私文書を簡単にまとめると以下のようになります。
項目 | 公文書 | 私文書 |
---|---|---|
作成主体 | 国、地方公共団体、公証人 | 個人、企業、団体など |
目的 | 公的業務の遂行や記録のため | 企業活動やプライベートな活動や意思の伝達のため |
保存義務 | 通常、法律や規則により保存が義務付けられる | 基本的に作成者の裁量で管理される(会社法などで保存期間が定められる場合もある) |
例 | 国や地方公共団体の会議の議事録、公正証書 | 契約書、メール、メモ、日記 |
公開性 | 公共性が高く、透明性が求められる | 基本的に非公開で、関係者のみが閲覧可能 |
法的管理 | 厳しい法律や規則に基づいて管理される | 特定の条件下で法的効力を持つ場合もあるが、管理は自由度が高い |
証拠力 | 裁判などで高い証拠力を持つ | 証拠力は公文書よりも低いことが多い |
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている