Last Updated on 2025年1月3日 by 渋田貴正
日本にオフィスがなくても非居住者が個人事業主登録できるケースとは?
非居住者には国内源泉所得という特定の所得しか課税が行われません。
この中でも、最も海外居住者(つまり非居住者)にとって、基本となる考え方が恒久的施設です。
この「恒久的施設」とは、日本国内にある、その非居住者の事業拠点をいいます。
そして、その拠点には以下の3つの種類があります。
1)店舗、オフィスなどの事業活動の拠点
2)1年超の長期に渡る工事現場
3)契約締結代理人等
このように、恒久的施設には3つが規定されていますが、このうち1)、2)は場所としての拠点です。ただ、2)はかなり限られますので、通常は1)で判断します。
そして、こうした場所としての拠点がなくても恒久的施設を有するとみなされて、非居住者でも日本国内で個人事業主扱いを受けることができる場合があります。
それが3)の契約締結代理人等の存在です。
契約締結代理人が存在すると、非居住者が日本で場所としての事業拠点を有しなくても日本で事業を行っていると扱われます。
契約締結代理人とは?
契約締結代理人とは、非居住者の事業のために同内容の契約を反復継続して締結する人や法人です。
ここでいう契約には以下のような契約が該当します。
1)非居住者が契約者名となる契約
2)非居住者が日本国内に所有する財産について販売や利用権の付与を行う契約(商品の売買契約など)
3)非居住者が日本屋内で行うサービスの提供契約
国内で非居住者のために契約を締結する代理人がいれば、その非居住者は日本国内に恒久的施設を有しているということになります。
ただし、その契約が同内容で反復継続する場合ではなく、相手によって契約内容が変わるような交渉を要するものであれば、契約を締結する代理人であっても恒久的施設とは扱われません。あくまで(機械的に)反復継続して同内容で締結される契約を締結する代理人のみが恒久的施設に該当するということです。
例えば、とある非居住者Aさんが何らかのソフトウェアを開発して日本国内で販売しようとするときに、日本国内で営業代行をするBさんにソフトウェアの販売を依頼した場合で、Bさんがあらかじめ決められた価格等の契約に従って国内の顧客と契約締結する場合は、BさんはAさんにとっての恒久的施設に該当します。日本語的に人を「施設」と呼ぶのはどうかとは思いますが、このケースではBさんという人間そのものがAさんにとっての恒久的施設というわけです。
この場合、Aさん自身が日本に店舗やオフィスを持つ必要はありません。Bさんという存在が恒久的施設に該当するわけなので、この場合Aさんは日本国内で個人事業主として扱われ、所得税の確定申告が必要となります。
ただし、租税条約の内容で上記の所得税とは別の定めがあれば、租税条約が所得税法に優先されます。そのため、恒久的施設の有無で非居住者の確定申告の要否を判断するには、その非居住者がどの国に居住しているかということ、そしてその国で租税条約を締結しているかといったことをチェックする必要があります。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている