Last Updated on 2025年1月6日 by 渋田貴正

相続放棄は家庭裁判所で行う手続きで、相続放棄の申立てが受理されたら、その人は相続人ではなくなったとみなされますので、遺産分割協議の参加や相続財産の取得ができなくなります。ただし、もし被相続人の借金などの債務が大きければ、相続放棄をすることによってその債務の相続も免れます。そのため、相続放棄するかどうかは相続人にとって重要な選択といえます。

この相続放棄については、以下のようなケースが生じた後はできなくなります。

時間の経過 自分のために相続が発生したことを知ってから3か月
相続人自体の行為

a. 遺産分割協議に参加した場合

遺産分割協議に参加し、自身が相続する割合や内容について合意したとみなされる行動を取ると、相続放棄をする権利を失います。たとえば以下のような行動が該当します。

  • 他の相続人と共同で遺産の分割方法を話し合った
  • 分割された遺産を受け取った

b. 遺産を一部でも処分した場合

相続財産を売却したり、処分する行為をすると、相続を承認したと見なされる可能性があります。たとえば以下のような行動が該当します。

  • 不動産を売却
  • 銀行口座から遺産を引き出して使用

ここで、よく問題になるのがハンコ代です。ハンコ代とは相続の場面においては遺産を相続しない代わりに一定の金額を請求するなどの行為をいいます。ハンコ代については相場は決まっていませんが数万円程度のケースが多いかと思います。

それではここで、それなりの金額のハンコ代を請求したらどうなるのでしょうか?例えば遺産が総額1,000万円ありハンコ代として50万円請求したら?このように、ある程度の金額をハンコ代として請求する行為は、遺産分割協議の末に「遺産を取り捨てる代わりに他の利益を得る」ことを合意したと解釈される可能性があります。いくらハンコ代といっても、それは相続がきっかけで発生しているものであり、お金に色はないとはいえ、ハンコ代の出どころは相続預金と考えられます。

ハンコ代には相場はありませんが、ハンコ代を請求するということは遺産分割協議に参加したととらえられる可能性もあります。遺産分割協議に「遺産を放棄する代わりにハンコ代〇円を渡す」旨の記載があれば、その時点で遺産分割協議に参加しているわけなので、単純承認したとみなされてその後の相続放棄はできなくなる可能性があります。

もし相続放棄の対価としてハンコ代を受け取るなら、あくまで相続人のポケットマネーから受け取る合意をするなど慎重に行う必要があるでしょう。

当事務所では、国籍問わず相続放棄についてのご相談を承っています。お気軽にご相談ください。