Last Updated on 2025年2月5日 by 渋田貴正

マカオ籍の人でも日本で遺言を遺せるのかということについてまとめました。

結論から言えばマカオ籍の人でも日本で遺言をすることができます。

そもそも外国籍の人が日本国内で遺言を作成するには3つのクリアするポイントがあります。

1)本国の法律で遺言の制度があるかどうか

2)遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか

3)不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか

マカオの法律で遺言の制度があるか

まず、遺言については以下のように定められています。

法の適用に関する通則法
第37条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

そして、マカオでは、遺言の制度がありますので、遺言自体は残すことができます。
ここで、マカオの法律について少し説明すると、もともとマカオはポルトガル領だったのが1999年に中国に返還されました。しかし、それまでの経済的、文化的な経緯などから、特別行政区として自治権を与えられています。つまり、マカオは中国の一部であり、マカオ自体が国ではありませんが、独立した民法典などが存在します。

遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか

そのうえで、遺言の方式については、以下のように定められています。

遺言の方式の準拠法に関する法律

第2条 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。
一 行為地法
二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

「行為地法」とは、とある法律行為をする地の法律のことです。公正証書遺言であれば、遺言という法律行為を行うのは日本国内の公証役場なので行為地法は日本です。

そのため、公正証書遺言については必ず行為地は日本になります。また、不動産に関する遺言についても不動産の所在地が日本国内にあれば海外で残した遺言であっても日本の民法の方式で残すことが可能です。

不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか

不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうかも重要な要素です。

マカオにおける相続の準拠法は、マカオ民法典第59条から第62条に規定されています。基本的に、相続は被相続人の死亡時の属人法(国籍に基づく法律)によって決定されます(第59条)。また、遺産管理人や遺言執行者の権限もこの法律に従います。

遺言の作成や撤回の能力については、第60条で定められており、被相続人の意思表示時点の属人法が適用されます。さらに、遺言の解釈や無効事由、相続契約の可否については、第61条で規定されています。方式に関しては、第62条で、行為地法や属人法に適合する場合は有効とされます。

日本におけるマカオ人の遺産相続については、通則法第36条により、被相続人の本国法(マカオ法)が適用されます。ただし、マカオの特殊な法制度を考慮し、日本国内に常居所があった場合は、日本の相続法が適用される可能性もあります(マカオ民法典第30条)。常居所の解釈はマカオ法によって決定される点に注意が必要です。

つまり、死亡時に日本に住んでいたのであれば日本の民法が適用できるということになります。

ただし、日本で外国籍の人が遺言を残す場合には、日本で遺言を作成できる外国での法的な根拠を示すなど日本国籍の人が遺言を残す場合に比べて手間がかかります。

当事務所では、遺言書の作成から、遺言執行者の就任まで、外国籍の方が安心して遺言書を残せるように国際遺言作成サポートのサービスを提供しております。

マカオ国籍の方で日本で遺言を遺したいという場合はお気軽に当事務所までご相談ください!