Last Updated on 2025年2月16日 by 渋田貴正

個人事業主が法人成りするタイミングとしては、年末だったり、年初だったり、年の途中だったりと人それぞれです。この場合で、年の途中に法人化した場合も、所得税の確定申告についてはいつも通り翌年の3月15日期限で行えば問題ありません。また個人事業税の申告義務に関する規定では、個人事業主が事業所得控除額を超える所得を得た場合、原則として毎年3月15日までに都道府県知事に申告しなければなりません。ただし、所得税の確定申告書または道府県民税の申告書を提出した場合、原則として個人事業税の申告を行ったものとみなされるため、別途申告は不要となります。

所得税や住民税については年の途中まで発生した事業所得以外に、その後の給与所得など他の所得も発生する可能性があるので、結局その年が終わらないと所得の総額が確定しないので、翌年になってからの申告となるのは当然といえば当然です。

しかし、事業税については年の途中で法人化するなどして個人事業主を廃業した場合にはその時点で事業所得が確定することになります。そこで、年の途中で法人化するなどして個人事業主を廃業した場合は、廃止日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に事業税のみの申告が必要となります。この申告には、当該年の1月1日から廃止日までの事業所得や譲渡損失の金額、専従者控除などの情報を含める必要があります。

また、事業税には所得税の青色申告特別控除の代わりに年間290万円の事業主控除が適用となります。この事業主控除も月割りとなる点に注意が必要です。

ただ、この個人事業主の廃業時の事業税申告については、実際に1か月以内に事業税の申告書を提出している人がどのくらいいるかといえば、かなり少数です。

結局翌年の確定申告書を提出すれば事業税の申告書を提出したものとみなされますし、個人事業税の申告書だけを作成するのは所得税の確定申告書を作成するのに比べて非常に手間がかかるので、多くの法人成りした人は翌年提出する確定申告書をもって事業税の申告書として扱ってもらっているというのが実情です。

事業税の必要経費算入

ただし、年の途中で事業税の申告書を作成することには一つメリットがあります。それは事業税の見込み額の必要経費算入です。

法人化して個人事業主を廃止した年については、その年の事業税の課税見込額を必要経費として算入可能とすることができます。

課税見込額は、(A ± B)× R / (1 + R) の算式で算出できます。

A・・・事業税の課税見込額を控除する前の当該年分の事業所得の金額
B・・・事業主控除(242,000円~2,900,000円)その他控除できる金額
R・・・事業税の税率

事業税の申告書作成の過程で、この課税見込み額を計算して所得税の確定申告時に必要経費算入することができます。事業税の金額通知は翌年の8月になるので、こうした事業税の課税見込み額の計算には払うべき税金を少なくできるという点で一定のメリットがあります。

ただし、この事業税の課税見込み額を必要経費に算入し漏れても、後日更正の請求は可能です。