Last Updated on 2025年2月27日 by 渋田貴正
日本の不動産登記手続きでは、申請者本人が手続きを行ったことや、第三者の承諾が必要な場合にその承諾が本人からのものであることを確認するため、印鑑証明書の添付が求められます。また、このことは相続手続きでも同様です。遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議書には実印を押印して、相続人の印鑑証明書の添付が必要となります。しかし、海外に居住している場合、日本の市区町村が発行する印鑑証明書を取得することができません。このような場合、どのように対応すればよいのかまとめました。
海外在住の日本人のための印鑑証明書の代替手段
海外在住の日本国籍の相続人が印鑑証明書の代わりに利用できる主な方法は以下の2つです。
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在外公館による署名証明
日本の大使館や総領事館などの在外公館では、署名証明を取得することが可能です。これは、本人が在外公館で書類に署名し、その署名が本人のものであることを公館が証明するものです。この署名証明は、日本国内での印鑑証明書と同等の効力を持ちます。
取得手続きの概要:
- 予約:多くの在外公館では、署名証明の取得には事前予約が必要です。
- 必要書類:有効な日本のパスポートや署名する書類などが求められます。
- 手数料:手数料がかかる場合があります。詳細は各在外公館のウェブサイトをご確認ください。
在外公館での署名証明の詳細については、外務省の公式ウェブサイトをご参照ください。
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外国の公証人による署名証明
日本の在外公館が海外で住んでいる自宅の近くになく、署名証明の取得が難しい場合、現地の公証人(Notary Public)による署名証明を利用することも可能です。この場合、現地の公証人が本人の署名を証明し、その書類にアポスティーユ(Apostille)または領事認証を受けることで、日本国内での効力が認められます。
手続きの流れ:
- 公証人の選定:現地で信頼できる公証人を探します。
- 署名証明の取得:公証人の前で書類に署名し、署名証明を発行してもらいます。
- アポスティーユまたは領事認証の取得:署名証明書に対して、アポスティーユまたは日本大使館・総領事館での領事認証を受けます。
アポスティーユと領事認証の違い:
項目 アポスティーユ 領事認証 対象国 ハーグ条約加盟国 非加盟国 手続き場所 各国の指定された政府機関 日本大使館・総領事館 手続きの流れ 公証人の署名証明取得 → 政府機関でアポスティーユ取得 公証人の署名証明取得 → 日本大使館・総領事館で領事認証取得 所要時間 国や地域によって異なる 大使館・総領事館の業務状況によって異なる 備考 アポスティーユ取得後、追加の認証は不要 領事認証後、必要に応じて日本の外務省での認証が求められる場合がある アポスティーユや領事認証の手続きについては、各国の政府機関や日本の在外公館のウェブサイトで最新情報をご確認ください。
過去の事例として、オーストラリア在住の日本人が現地の公証人または治安判事による署名証明(Statutory Declaration)を取得し、日本国内での手続きに利用したケースがあります。この場合、署名が日本語やローマ字であっても問題なく受理されています。
また、ブラジル在住の日本人が現地の公証人による署名証明を取得し、相続手続きや委任状の作成に使用した例もあります。この際、書類が現地語で作成されていても、適切な署名証明と認証を受けることで日本国内で有効とされています。
海外に居住しているために印鑑証明書が取得できない場合でも、在外公館や現地の公証人による署名証明を活用することで、日本国内の不動産登記手続きなどを円滑に進めることが可能です。各手続きには国や地域によって異なる点もあるため、最新の情報を確認し、適切な手続きを行うことが重要です。
当事務所では、海外在住の方々の日本国内での各種手続きに関するサポートを行っております。お困りの際は、お気軽にご相談ください!

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。