Last Updated on 2025年3月4日 by 渋田貴正
海外に住んでいる被相続人や、日本在住でも海外に資産を持っている人が亡くなった場合、日本と海外の両国で相続税が課税される場合があります。この場合、「外国税額控除」という制度が適用される可能性があります。
相続税の外国税額控除とは?
外国税額控除とは、海外にある財産(在外財産)を相続または遺贈で取得した際、その国で相続税が課税された場合に、日本の相続税と二重に課税されるのを防ぐための制度です。具体的には、海外で支払った相続税に相当する金額を、日本の相続税から控除することで、負担を軽減する仕組みとなっています。
相続税の外国税額控除の適用対象者
外国税額控除を受けられるのは、以下の条件を満たす人です。
条件1)相続または遺贈により在外財産を取得した人(被相続人からの暦年課税贈与も含む)
条件2)在外財産に対して、その国で相続税に相当する税金が課税された人
この2つの条件を満たしている場合、日本での相続税の申告時に外国税額控除の適用を受けることができます。
相続税の外国税額控除の計算方法
外国税額控除の計算は、以下の式で求められます。
税額控除額=日本の相続税額×(在外財産の課税対象額÷全財産の課税対象額)
例えば、以下のケースを考えてみましょう。
項目 | 金額 |
---|---|
日本の相続税総額 | 1,200万円 |
相続人の取得財産総額 | 9,000万円 |
在外財産の評価額 | 3,000万円 |
海外で支払った相続税 | 400万円 |
この場合、控除額は次のようになります。
1,200万円×(3,000万円÷9,000万円)=400万円
この400万円が、日本の相続税から控除されます。ただし、控除額が日本の相続税額を超える場合、その超過分は控除できません。
相続税における租税条約
もう一つ、国際的な課税で忘れてはならない論点が租税条約です。国際間での二重課税を回避するため、日本は多くの国と租税条約を結んでいます。ただし、現状では、相続税に関する租税条約は日本ではアメリカとしか締結されていません。
日本の相続税は「遺産取得課税方式(被相続人の居住地で課税)」ですが、多くの国は「遺産課税方式(財産のある国で課税)」を採用しています。この方式の違いが、租税条約の締結を難しくしている要因の一つです。
日米間では、相続税に関する租税条約が締結されています。この条約により、以下のような取り決めがされています。
1) 財産の所在地に応じた課税が基本
2)同じ財産に対して二重課税を防ぐための調整措置
3)相続税控除の適用範囲が明確化
外国税額控除は、海外の財産に対する二重課税を防ぐための重要な制度です。また、日本の相続税に関する租税条約は現時点でアメリカとしか締結されておらず、それ以外の国との相続税調整は慎重に行う必要があります。
海外に資産を持つ場合、税務処理が複雑になるため、国際相続に強い専門家に相談することをおすすめします。ぜひ、お気軽にご相談ください!

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。