2021年4月から税務署などに提出する税務関係の書類は、申告書を含めて、そのほとんどが押印不要になりました。押印がないと受理してもらえなかった書類も、押印なしで受理してもらえるようになるので、実務的にもかなりやりやすくなります。
(いろいろな認印をストックしておく必要がなくなった税理士事務所もたくさんあるのでは?)
そして、こうした押印廃止の波は、司法書士にも押し寄せてきています。(良い意味で。)
司法書士業界では、税理士業界に先立って、2021年2月15日受理分の登記申請から、以下の書類について、押印が廃止されました。
【相続その他不動産関係】
1)法定相続情報一覧図の申出書
ただし、遺産分割協議書への実印押印については従来通り必要です。実印を押印する意味は、印鑑証明書とセットにすることで確かに相続人自身の意思に基づいて遺産分割協議が行われたことを証明するためです。いくら押印廃止といっても、意思確認の意味で押印している実印まで廃止にするわけにはいきませんね。
【共通】
- 原本還付請求を行うためのコピーへの契印
【商業登記関係】
- 株主リスト(株主総会議事録とセット)
- 資本金の額の計上を証する書面(増資のときなど)
- 取締役就任時の本人確認書類(運転免許証など)
ただし、定款や取締役会議事録、取締役の一致を証する書面のように、会社法上記名押印などが求められている書類は、従来通り押印が必要となります。
司法書士としては、押印廃止といっても、委任状などその他の書類への押印は必要ですし、書類を作成する必要があることには変わりありません。実務的には、押印はせずに、登記完了後、登記事項証明書を納品する際に控え書類として渡す流れなどが考えられます。
社会保険労務士業界でも、年金事務所やハローワークへの申請書などへの押印義務が廃止されていますし、少なくとも、「認印」というものは、税理士や社会保険労務士業界では使用しないということになります。(司法書士業界は、取締役の決定書などで認印の押印が必要になる場面がありますが。)
たかが認印の押印廃止といっても、書類作成から役所への提出までが継ぎ目なく処理できるので、業務効率は結構向上すると思います。(もともと電子申請や電子申告を行っている場合には、あまり関係ないことかもしれませんが。)登記関係でも、一部の書類だけでも押印が廃止になれば、クライアント様との間でやり取りする書類が減るので、これもまた効率アップです。(クライアント様からしても、押印は手間になるでしょうし。)
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている